この家の御主人のM氏とは家づくりの会を通じて知りあいました。M氏は定年を迎えられて会社を退職され、東京を離れて故郷の山口村に家を建てました。敷地は木曾谷を見下ろす場所にあり、静寂と澄んだ空気は健康的で、見晴らしも絶好の場所。谷底を流れる木曽川を越えた岐阜県側には標高950メートルの高峰山がゆっくりとした時の流れをつかさどっているかのように緩やかな稜線を描いています。ここはいままで畑だったので土が軟らかく、また田んぼに囲まれ、湧水に戸惑いましたが、出来上がった家には満足していただいております。この家の東西の中心線は東側の国道19号線に面した諏訪神社の社の軸線につながり、こんもりとした森に囲まれた社の境内には南方の亜熱帯の植物も数多くみられます。ここは長野県の南端に位置するので、雪も少なく、気候的にはおだやかです。眺望のきく西側には御主人の特技の居合道の道場を備えていますが、ここから西方を望むと、田園風景の向こうには木曽川と小高い山並みの織りなす曲線が続いています。道場の床や壁を始め、廊下や居間の廊下には節の多い桧を使い、寝室の天井には揉み和紙を、ふすま紙には九頭竜紙、又、照明器具は私が設計した本美濃紙を貼ったものを使っています。屋根は東西にむくりをいれ、Mさんの舞う居合いの剣先が描く円弧が宇宙や大自然に呼応するかのように、曲線的な屋根の先端の造形的な隠喩として取り入れられています。深い庇の懐は2mを越え生命の宿りそうな闇の気配すらあります。外部の石垣には現場で産出した石と近くの美濃石を積み、外壁は漆喰と土壁と厚い杉板の組み合わせです。
| 建設地 | 長野県木曽郡山口村 |
| 家族 | 老夫婦 |
| 型式 | 道場+住宅 |
| 規模/敷地面積 | 450.00㎡(136.36坪) |
| 1階床面積 | 17.13㎡(5.19坪) |
| 2階床面積 | 146.07㎡(44.26坪) |
| 延床面積 | 163.20㎡(49.45坪) |
| 建築面積) | 165.64㎡(50.15坪 |
