ある小説集より。
「頑張れ!セルフビルダー」からの抜粋
熊田猛は、今は還暦を過ぎて久しく、体力の衰えは隠しようもない。だが、若い頃は、はち切れんばかりのエネルギーを持てあまし、時に勇猛活発、やる気満々だった。
私は、学生時代に熊田に会うまで「自前流儀で建築を作る喜び」など考えたことも無かった。何故なら、こういう事が出来る人間は、さぞや特殊技能の持ち主か奇人変人の類だろうと、恥ずかしながら勝手な想像をしていたからだ。
ところが、あに図らんや、あれから数十年経った今では、セルフビルダーに与えられる技術は、工具の発達や普及、インターネット情報、バックアップ会社の登場などで、格段の向上を遂げるとともに、広く市民権を得るに至り、さらなる普及をもたらしている。
最近では、構造がシンプルで、作業もしやすい、2×4(ツーバイフォー)工法に、在来工法を組み込んだ工法をバックアップする会社が、ブームを呼びそうな勢い。こういう会社は、建築家や建材メーカー、商社や工事を請け負う工務店、大工チームなどをコーディネートして、建主のセルフビルドのサポートをするのである。いやはや、世の中、かわったものである。
とまれ、「出来るセルフビルダー」ほど妙に楽しそうだ、というのは不思議な感覚。そう感ずるのは、私だけでは無いと思うのだが・・・やっている側のひたむきさ加減はさておき、こちらには気ままな遊び感覚と映る。まるで戦国時代の武将が城を築き、自分の陣地を増やしているようなアンバイだ・・・
だからという訳でもなかろうが、こういう風景を眺めていると、自分も手を動かしてやってみたいなどという欲望が、どこからとも無く湧いてくるから、これまた何とも不思議なモノである。
