私の小説から~

 ある小説集より。


「頑張れ!セルフビルダー」からの抜粋


 髭の男・熊田猛は、様々な商売に明け暮れ、ブローカーのような顔を持っていた。
中でも建築には人一倍こだわりがあり、他人に頼らず自前で建築を作ることに希望を感じていた。彼は、市民にドンドン活用してもらえる器を提供したいと考えていたのであるが、具体的にはレストランや喫茶店やテナントビル、あるいはアパートなんかを対象とした。つまり、都内の各地に親譲りの土地を所有していたから、これを生かしたいと思っていたのである。
 熊田は、都内の某建築専門学校で実践的な建築技術を学んだあと、アメリカのテキサスで数年間にわたって大工の見習いをし、ツーバイフォーによるパネル工法を習得して来た。 だが、まだまだ実践の浅い自分の技術は、たぶんに熟練の域に届いていないということは十分わきまえていた。セルフビルダーには、いつまでもこういう鳥瞰的な自覚と自制の精神が必要だが・・・
 たしか熊田は、当時の自分のことをセルフビルダーと称していたが、言い回しを変えれば、『自前精神に乗っ取っている、建築屋の端くれ』であったとでもいった方が、読者の皆さんには、わかりやすいかもしれない。
 彼は、連れ合いの美代子との二人暮らしで、住んでいたのは空港に近いJRの駅前。彼の事務所と加工場は都心にあり、そこは幹線道路に面し、地下鉄駅にも近いので、国の内外の仕事をこなすには便利な場所であった。

 

検索


カレンダー

2012年02月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29      
BPRO
Powered by
Movable Type 3.34

Produced by. B'PRO Corporation