信州の建築家・ノート

私の小説より~

頑張れ!セルフビルダーより抜粋


 それは、レストラン近くの閉鎖された公園にデンと居座っている、雨ざらしのさび付いた蒸気機関車のデコイチ「たもつくん」を譲り受け、ボロボロになった所を取り除いて、胴体を輪切りにして、看板替わりに建物の正面に取り付ける、という発想であった。

 早速JRから譲ってもらったデコイチの「たもつくん」を、鉄骨工場のカッターで半分にして、錆を落とし、穴の空いた所を補修し、黒いペンキで仕上げて建物に取り付けて見ると、意外なことにあたかもカナディアンレストランという、デッカイ貨車を引っ張る、キャンピングカーのような出で立ちになった。

 少々安定感に欠けるが、デコイチの「たもつくん」のファサードは真っ黒だし、煙突も付いてるし汽笛も鳴らせる。これなら目立つぞ、間違いなく子供は喜ぶだろうし、鉄道マニアにはたまらんだろう、と言わんばかりに、熊田は満足げな表情を見せるのであった。

 熊田は、こだわらず気にせず、行動するというのが持論。何事にたいしても好奇心に溢れ、時々奇想天外で人を驚かすことが好きだ。
 
 こういう人間は、普通のモノサシで計れないのが取り柄だが・・・まあ、そんな訳で、熊田の予想通りデコイチの「たもつくん」は、しっくりとまわりに馴染み、これを見た美代子も、チョットごついけどまあ良いんじゃないの・・・と喜んでくれた。

 その後、数ヶ月の間、幾度となく役所の見回り担当官が指導に訪れた。その度に、デコイチの「たもつくん」が張り付いたガラス瓶のレストラン」の内装や設備の改善に手間どった。

 熊田は、「こうやればああやれで、いちいちめんどうなもんだな、もっと簡単な手続きにしてもらいたいもんだが、そうはいかんモノか。」としきりにこぼした。
 
しかし、係官はデコイチの「たもつくん」のことについては、なにも言わなかった。

 どうしろこうしろと、無理難題を持ちかけるに相違無い、今度もいろいろお灸を据えられるんだろう、と恐々ガクガクしていた彼としては、ようやくにして、ルールという束縛から救われる思いであった。

 

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