鳩山内閣の前原国土交通相が、全国
143のダム建設の見直しをするのだという。
ダムを止めれば貴重な風景が水没を免れる
など期待も大きいが、景気が余計に下向き
になるなどの「副作用」が生じるということもあり
得るわけで、なかなか先が読めない。
しかし、50年前からの計画もあるそうだから、
現実に照らし合わせて考えるのが妥当だろう。
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私の小説・戦う住宅
頑張れセルフビルダー&日曜大工より~
熊田の工事のやり方の中で困ったことの一つは、一旦やり始めたら自分の世界に埋没してまわりが見えなくなってしまうことだ。仕事に没頭するあまり、うっかり、隣の家を壊すことまでは無いにしても、夢中になるとルールが霞のように稀薄になる傾向が無きにしもあらずなのである。つまりルールがどこかへ逃げていってしまうのである。だから建物を作ってから、「やや!隣の家の敷地に出てしもうた!」なんてことが万一起こったのかも知れないが、幸いにも現役の間はそういうことはかろうじて無かったのが幸いである。
・・・現在に至って・・・
世間を賑わした耐震偽装の事件以来、耐震の基準は年々厳しくなり、建築士の制度も変わってきている。それ故、建築の世界では難しい手続きが増えつつある。
・・・・
熊田は、今ではすっかり歳をとり、セルフビルドは十数年前から諦め、ガラス瓶のレストランはもとより、自前建築の方は孫のタケルに任せている。私は、あの頃、熊田が何故セルフビルドに吸い寄せられたのか聞きたくて、ある夏の日の午後、自宅を尋ねたら、彼は見まがう程に真っ白くなった髭面の真ん中あたりにタバコをくわえ、それを美味しそうにふかしながら「さあ、さあ奥へどうぞ・・」と座敷に迎え入れてくれた・・・・目尻にはしっかりと皺が馴染んでいる。私はそこで聞いた。
「熊田さん、あなた、今までにレストランやアパートとか、いろいろな建物を作ってきたが、それにしても、よくまあ、あんなに長い間くたびれもせずに根気が続いたもんだと、感心しちゃうよ、そういう富士山のわき水みたいな淀みないエネルギーは、どこから湧きだしてきたの?そこのところをちょっと教えてくれないかなあ、実は、これは前々から不思議ですごく聞きたかったんだ・・・」
「ああ、ああいうエネルギー?・・それはまあ・・・何でも自分でやらんと気が済まん・・・作る楽しみっていうか・・・そういう楽しみを独り占めにしたいっていう 征服感が欲しいというべきか・・、要は、人に任せられない性分だから、自分でやりたいんだ、たぶん、それが僕の推進エンジンだったね。
それに、僕の場合は、人並み以上に体が丈夫で、何でも作れる自信があった。しかし、セルフビルドっていうが、自分では上手に出来ない所があるから、サッシ屋やクレーン屋なんかには、いつも協力してもらったよ。何と言ってもこの方が安全だからね、だがね、アパートはそうでもないが、レストランなんかはお客さん相手だから、備えが多くて難しい。それぞれ専門家に任せんと、客のクレームに押しつぶされちゃう事だってあるんだ。」
「成る程、レストランは、確かにいろいろな設備が要るから、アパートに比べれば手間がかかるからね。レストランをやるについては、美代子さんの希望が強かったの?」
「ああ、あの頃は美代子もいろいろ言ってくれたけど、あんまり聞かないようにしてた。だから、ああなったって訳でもないんだが、それにしても、役所の人はよく来たし、書類、書類でホトホト閉口したよ。まあ、あの頃はまだ役所は多少の事は大目に見てくれたがね・・・
だが、それに比べて、今じゃあ耐震耐震って騒ぐし、それに換気扇だ火災報知器だって言うだろう。たぶんこれじゃあやってられんと思うな・・・それにしても、規制緩和なんて、どこへいっちゃったんだろうねえ、近頃の事はなんだか分からんが、いつの間にやらルールは厳しくなる一方だというし、申請書類が役所内を回るのに時間がかかって、待ちきれなくて困るって言うじゃあないか・・・」
「そうね、そういうことはもっと真剣に考えてもらいたいね、それにしても、あなたもよくやってきたよ。たしかに、いまのように書類審査に時間がかかりすぎるなんてことは無かったし、規制も緩かったが、それでも、自分の力でああやって幾つか快適な建物が出来たんだから、さぞや満足でしょうよ。」
「うーん、珠にはあんたも有難いことを言う・・・なにしろ、当時は、霞ヶ関の官僚やらお役人やらが、我々のようなモンをねらい撃つ?・・・なんて、そんなことゼンゼン考えられなかったから。要するにまだまだ社会情勢を現場の中で判断できる人がいたから、そんなにうるさくもなかったんだよ。まあ、たしかに知らないとうるさいが・・・それで、もっと自由にやろうと無理しちゃって、うっかり届けを出さなかった所もあったが・・・」
「ほほう・・・まあ、おっしゃることは分かるが、それはあんまりいいことじゃあないね、どんなことでも無許可はダメですよ・・・しかしまあ、それはそれとして・・・最近の耐震補強のようなことは金も時間もかかるから、もっと行政に資金援助してもらえれば有難いんだが、援助が枠取りで打ち切られるのが気になるねえ、イヤもちろん、専門の技術者にも相談しなくっちゃあならんが・・・」
「おっしゃる通りで・・・耐震だけはちゃんとやらんとな。まあルールもたしかに大事だが・・・セルフビルドには自分で工夫してやれる楽しみや、出来たときの満足感という醍醐味もある。」
「確かに出来合いより、思い通りに出来るからね・・・巷では建設会社だなんて看板架けてても、メーカーの下請けが多いから、そこに頼んでも上手くいかないことがあるし・・まあ、こんな事を言うと、良心的で真面目な会社に叱られるが・・職人の手作りだなんて触れ込みにも惑わされちゃあいかんってこともある・・・考えてみれば、変な世の中になったモンだが・・・間違って、いかがわしい看板ぶら下げた会社に騙されないように気をつけなくちゃあ。」
「そうそう、そう言うこと、こういう社会の成り行きはどうにもならん・・・だからっていうわけじゃあないが、自分で建築を作るって、これがまた、怖がらずにやってみると結構面白いもんだよ、日曜大工でもなんでも、体を動かすってことは創造する頭脳を使うってこと・・・やるんなら、脱サラでも定年で会社を辞めてからでも遅くない。ちょっと勇気が在りさえすればだが・・・それによく考えてごらんよ、自分で家が直せたり、増やせたり出来るってだれでも持ってる夢だよ・・・そう思いませんか?あなた。」
「勿論!そうだ、セルフビルドでやるって、自分で野菜を作るようなモンだし、確かに、こういう感覚は今の日本にはまだまだ不足しているが、いいことだと思うな・・・要するに誰でもセルフビルダーってことか・・・自分でやってみれば、なるほどこれじゃあ規制が多くて、締め付けすぎだってことにも気づくし、市場の物の値段や流通のカラクリや職人の動向なんかも分かる・・・これはあくまでもメリットだがね。それにまあ、できれば、役所の人にも机の上じゃあ無くて、もっと現場を見て見聞を広めてから、いろいろ考えてもらいたい・・・間違っても場違いなルールで真面目な現場を困らせちゃあいかんと思うよ・・・」
こう言ってから、熊田がじっと黙って聞き入っていることに気をよくした私は、さらに続けた。
つづく・・・・
