「ぼけ」のつぼみも心なしか大きくなってきたように
感じます。
2月はやや冷えが和らぐようなので、日中の気温が高
くなれば、つぼみのふくらみも日増しに増すことでし
ょう。


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私の小説「戦う住宅」より~
「改心」
昭一は、この言葉があたかも用意周到で心理的な揺さぶりだとは知りつつも、小菊に逆らって自分の言い分を並べたてたところでどうにもならないことは分かっていた。なんだか逃げ道をふさがれ追い詰められ、心を見透かされたような気がした。
「きょうの彼女は何時になく真剣ではないか・・・そうかといって縛られるのは嫌だし、今までのように自由奔放に生きるのも捨てがたい・・・」そんなことを考えたのだが、そのじつ小菊に心臓をわしづかみにされたようなショックで、思わず体が硬直して力が抜け落ちそうになるのを防ぎようがなかった。
暫くは身の毒が吸い取られたようなうつろな気分になり、自分が自分でないような妙な気分に襲われた。昭一はたまらず小菊から目をそらし、足下に転がるなんら特徴のない丸い小石を見やった。
「俺も路傍の石のようなモンだが、風に身を任せるようなギャンブル人生も寂しいし、空しさだけで何も残らないってのもせつない生き方だ・・・」そう思うと、じわっと目頭が熱くなり、小学校の熱血先生に諭された子供のように情けなくなった。
その時は、まだ酒を湯水のように飲み、競馬、競輪にも注ぎ込み、さゆりにも心が揺れていた。しかし、こんなことで小菊を失っては身も蓋もない・・・昭一は、そう考えた。小菊の云うことに理がある限り、酒をへらし、賭け事から足を洗い、さゆりを諦めると云うしか、その場を取り繕う方便が見つけられなかった。
とうとう小菊に引導を渡されてしまった。彼は、これは一時の方便ではなく、野放図な自分との禁欲の戦いの始まりだと思った。
俺に禁欲なんぞと言う言葉が馴染むのか・・・昭一は揺れる心をもてあそび、いたたまれず小菊に背を向けると、不忍池の柵に手を置き、水面に突き出した蒲の穂の間をぬって泳ぐ水鳥のつがいをじっと見やり、しばし考え込んだ。池をサーと吹き抜ける晩秋の一陣が、彼の頬をなでていった。
さて、仮初めの、空しさのなれの果てになるとも知れぬ、さゆりの独占欲の方は、嫉妬に狂うほどに、小菊との関係をあれこれと問いつめた。だが昭一は、次第にその息苦しさから遁れたい、このままでは頼みの小菊に逃げられると思い、とうとう、後ろ髪を引かれる思いでさゆりを放り出した。
小菊の本名は安岡しのぶといい、津軽のじょっぱりだが、一度こうと決めたら心底情人に尽くす性分だ。しのぶは、粘り強く情が深い。自分の内面をあまり人に見せたがらない。だが、歳の離れた年長の昭一の世話を、生き甲斐に感じているところもあった。昭一が自分の意をくみ心に決めてくれたことが何よりの励みだった。
しのぶは、昭一に津軽じょんがら節をよく聞かせてくれた。その三味線の奏でる音は、ばちを叩きつける激しいものだ。弦が繰りだす情景はどこか人の心に響き、一寸先も見えない津軽平野に吹きすさぶ荒々しい横殴りの風雪を伝えるに十分だった。
それから間もなくして、小菊はきっぱり芸者を辞め、昭一の家人になった。昭一の両親は、嬉しさのあまり顔をくしゃくしゃにして涙した。
続く...